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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

罪ですネ源ちゃんは(発端篇)

話かわって……。

本郷妻恋坂、司馬十方斎の道場では。

老先生は病あらたまって、死の床。きょうあすをも知れない身でしきりに、剣をもって相識る柳生対馬守の弟を、娘萩乃の入り婿に乞い請けた。その柳生源三郎の到着を、枕の上に首を長くして待っている。

ところで――かんじんの萩乃は、伊賀の暴れン坊と唄にもあるくらいだから、強いばかりが能の、山猿みたいな醜男に相違ないと、頭からきめて、まだ見たこともない源三郎を、はや嫌い抜いている。

この時です。妻恋坂の司馬の屋敷へ雇われてきた、若いいなせな植木屋がございました。

色白な、滅法界いい男。

罪ですネ源ちゃんは(発端篇)

瀕死の司馬十方斎先生は、同じ剣家、柳生一刀流の大御所対馬守との間に話のきまった、その弟伊賀の源三郎の江戸入りを、きょうかあすかと待って、死ぬにも死ねないでいます。

源ちゃん、品川まで来たのはいいが、婿引出のこけ猿の茶壺を失って、目下大騒ぎをしてさがしていることは、一同ひた隠しにして先生の耳へ入れないでいる。

「源三郎の顔を見て、萩乃と祝言させ、この道場を譲らぬうちは、行くところへも行けぬわい」

というのが、死の床での司馬先生の口癖。