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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

丹波は正眼、源三郎は無手。と! すっかり気おされて、精根がつきはてたものか、峰丹波、朽ち木が倒れるように堂ッと地にのけぞってしまった。

刀痕の影をきざませて、ニッと微笑った左膳。

「なかなかやるのう。かわりあって、おれが相手だ」

もとより、なんの恨みもない。斬りつ斬られつすべき仔細は、すこしもないのだ。ただ、剣を執る身の、やむにやまれぬ興味だけで、左膳と源三郎、ここに初めて真剣の手合せ――まるで初対面の挨拶のように。

源三郎は、意識を失った丹波の手から、その一刀をもぎとって、柳生流独特の下段の構え。

丹波の身体は、与吉が屋内へかつぎこんだ。

この騒動に、お庭をけがす狼藉者とばかり、不知火の門弟一同、抜きつれて二人をかこむ。名人同士の至妙な立合いを、妨げられた怒りも手伝い、左膳と源三郎、こんどは力をあわせて、この司馬道場の連中を斬りまくることとなった。

ちょうどこの時、奥まった司馬先生の病間では……。

出る仏に入る鬼(発端篇)

「おうッ! 不知火が見える! 生れ故郷の不知火が――」

これが最後の言葉、司馬老先生は、とうとう婿の源三郎に会わずに、呼吸をひきとってしまった。