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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

灰屋、夜かご、祭文語り、屑拾い、傘張り、夜鳴きうどんなど、もっとも貧しい人達がこのトンネル長屋にあつまって、いつもその狭い路地には、溝泥の臭気と、物のすえたしめっぽいにおいとともに、四六時中尖った空気が充満して、長屋の住民はどれもこれも、みんな貧ゆえのけわしい顔――。

亭主は亭主同士のいがみあい、山の神は井戸端会議の決裂、餓鬼は餓鬼で戦争のようななぐりあい、なんだかんだと夜昼喧嘩口論のたえまはなく、長屋中いつ行ってみても、眼をとがらし、口をとがらし、声とがらしているところから、誰いうとなく、人呼んでとんがり長屋。

この、名所図会にない浅草名所とんがり長屋に。

さきごろから、変わり種が一つふえた……というのは。

あの羅宇直しの作爺さんの家に、蒲生泰軒というたいへんものが、ころげこんでいるんです。

いつか――。

チョビ安の預けていった壺の箱をねらって、峰丹波一派の者が、この作爺さんの家へ押しこんだことがあった。そこで、箱のふたをあけてみると、内容は、左膳の計略で壺にはあらで、隅田川の水に洗われたまるい河原の石……いずれをいずれと白真弓と、左膳がその石のおもてに一筆ふるってあったのは剣怪ちかごろの大出来だったが、憤慨したのは司馬道場の弟子どもで、かわりに、作爺さんの孫、お美夜ちゃんをさらっていこうとひしめい