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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
額部に幾本もの深い皺をきざみ、白い長い眉毛の下から、じっと忠相を見つめて、
「上様にも、ひとかたならぬ御心痛でのう」
と、言った。
野太い、よくとおる声だ。もの言うたびに、背中の瘤がヒクヒク動くのは、たしか奇態な動物が、着ものの下にもぐりこんでいるように見える。
「知ってのとおり、日光御修営は、日一日と近づく。柳生はそのこけ猿の壺とやらを手にいれぬかぎり、ほかに金の出どころは絶対にないのじゃから、イヤモウ、一藩をあげて今は必死のありさまじゃ」
「すると、上様は」
と忠相は、ちょっと頭をさげて、
「柳生に御同情をたれ賜うて、柳生のために、それほど御心配になっておらるるので」
「うむ。それもある。剣をもって立つ天下の名家を、かようなことで、むざむざとつぶすにもあたらぬからのう」
「ごもっとも」
「第一、柳生をくるしめるのは、上様の本意ではない。しかるに、このままで押しすすんで、柳生がこけ猿を手に入れて財産を掘りだす前に、日光御造営の日を迎えることになれば、柳生藩一統はくるしさのあまり、何をしでかそうも知れぬ。そこは、剣術はお手のものの連中だし、例の伊賀の暴れン坊とやらをはじめ、手ごわいやつがそろっておることだから……上様の御憂慮なさるのは、この点じゃ」