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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

二

いまも左膳は。

「うむ、いい稼業をしてきたぞ」

と、手の壺の箱へ、ちょっと顎をしゃくって見せたきり、ひややかに家の中へ――。

二

お藤の、袖屏風した裸手燭が、隙もる夜風に横になびいて、消えなんとしてまたパッと燃えたつ。

左膳を追って、お藤はうれしげに、とっつきの茶の間へあがる。

二間きりの小ぢんまりした家です。かたすみの煎餅蒲団に、チョビ安が、蜻蛉のような頭髪をのぞかせ、小さな手足を踏みはだかって、気もちよさそうな寝息を聞かせています。

左膳は、さもさも父親のように、そのチョビ安の寝顔をのぞきこんで、

「罪がなくていいなあ、餓鬼は」

と、思い出したようにお藤をかえりみ、

「あすは旅だ」

どてらをひろげて、左膳のうしろへ着せかけようとしていたお藤姐御は、この突然の言葉に、吐胸をつかれて、

「オヤ、だしぬけに旅へ……とはまた、どちらへ?」

「ゆく先か、それアこの壺にきくがいい」

どっかり長火鉢の前へ、細長い脛で胡坐をくんだ左膳、こけ猿の包みを小わきに引きつけて、

「どこへ旅に出るか、おれもまだ知らねえのだ」

「あらま、ずいぶんへんなおはなしじゃないか」

と、半纏の襟をゆりあげながら、お藤は左膳と向きあって、火鉢のこっち側に立て膝。