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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
二
田丸主水正は、主君対馬守のお代理という格式で、突き袖をせんばかり、そっくりかえってその部屋へはいっていくと、竹田は、前に出ていた天目台をちょっと横へそらして、両肘を角立てて、畳をなめた。
平伏したのだ。
「これは、御家老田丸様……いつも御健勝にて、何よりと存じまする」
「アいや、そこは下座。そこでは御挨拶もなり申さぬ」
と主水正は、袴のまちから手を出して、床の間のほうへしゃくるような手つきをした。
「どうぞ、どうぞあちらへ――」
「は。今日は、主人将監のかわりでござりますれば、それでは、失礼をかえりみませず、お高いところを頂戴いたしまする」
および腰のすり足、たたみの縁をよけて、ツツツウと上座になおった竹田なにがしが、
「実は、主人将監が自身で参上つかまつるはずで、そのしたくのさいちゅう――」
いいかけることばを、主水正は中途からうばって、
「いや、わかっております。そのおしたくのさいちゅう、この二、三日ことのほかきびしき余寒のせいか、にわかに持病の腹痛、あるいは頭痛、あるいは疝気の気味にて、外出あいかなわず、まことに失礼ながら貴殿がかわって御使者におたちなされたと言われるのでござろう」