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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

彼はそう言って、その贈り物をもう一度、主水正のほうへ押しやった。

敬意を表する……便利な言葉があったものです。百円札の束をぐるぐると新聞紙にくるんだり、思い出してもゾッとするような五月雨が、ショボショボ降ったり――イヤ、そんなことはどうでもいい。

この間から、全国諸侯の使者が、踵を接してこの林念寺前の柳生の上屋敷をおとずれ、異口同音に、日光御修営に参加させてくれとたのんでは、競って高価な進物を置いてゆく。その品物の中には、必ず金一封がひそんでいるので。

その真意は。

これを献上するから、日光造営奉行の下のお畳奉行やお作事目付は、どうぞごしょうだからゆるしてくれ……という肚。

早く言えば、日光のがれの賄賂だ。早くいっても遅くいっても、賄賂は賄賂ですが。

主水正のほうでも、それはよッく承知していて、一番進物の額のすくない藩へ、この、人のいやがる日光下役をおとしてやろうと、今、全部の藩公からつけとどけのあつまるのを待って、きょうあたりボツボツ締め切ろうかと思っていたところだ。それが、最後の五分間になっても、こうしてまだやってくる。

お向うの林念寺の坊さんなどは、訳を知らないから、柳生様では大名相手のお開帳でもはじめたのかと、おどろいている。