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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「じゃ、いそいで行って来な」

「へえ、此壺を妻恋坂へ届けせえすれア、とんでけえってめえります。また当分かくまっておもらい申してえんで」

「あいさ、これは承知だよ」

「こういう危ねえ仕事には、けえって夜より、真っ昼間のほうがいいんです」

「お前がそうしてそれを持ったところは、骨壺を持ってお葬式に出るようだよ。似合うよ」

「ヤ、姐御、そいつあ縁起でもねえなあ」

与吉が閉口して、出て行きますと、あとは急にヒッソリして、おもて通りの駒形を流して行く物売りの声が、のどかに――。

しばらく、天井の雨洩りのあとを見ていたお藤は、やおらムックリ起きあがって、手を伸ばして三味線をとりあげました。

すぐ弾きだすかと思うと、さにあらず、押入れをあけて、とり出したのは、中を朱に、ふちを黒に塗った状箱です。紐をほどく。ふたを除く――。

そして、お藤、まるで人間に言うように、

「さア、みんな、しっかり踊るんだよ」

と! です。おどろくじゃアありませんか。その状箱からぞろぞろ這い出したのは、五、六匹の尺とり虫ではないか――。

同時に、お藤、爪びきで唄いだした。

「尺取り虫、虫

尺とれ、寸取れ」