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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
この壺に関して、とかく迷惑なうわさの横行いたす折りから、御辺がおたずねくだすったのは、何よりありがたい。一つ、御辺を証人として、無責任なごしっぷを打ち消すために、壺をごらんにいれよう」
「ぜひ」
と竹田は乗りだす。
そんなに乗りださなくっても、これはどこから見ても、誰が見ても、まったくこけ猿の茶壺に相違ない。じつに不思議なこともあればあるもので、主水正が、上の布を取りのぞくと、時代がついてくろずんだ桐の箱が出てきた。その箱のふたをとれば、あかい絹紐のすがりがかかって、そのすがりの網の目を通して見える壺の肌は、さすがに朝鮮古渡りの名器、焼きのぐあいといい、上薬の流れあんばいといい、たとえば、芹の根を洗う春の小川のせせらぎを聞くようだと申しましょうか。それとも、雲と境のつかない霞の奥から、ひばりの声が降ってきて――。
いかさまこけ猿の銘のとおりに、壺の肩のあたりについている把手の一つが、欠けている。
「ウーム!」
竹田がうなった。
「いや、たいしたものですなア」
六
石川左近将監殿家臣、竹田なにがし、煙にまかれたように、すっかり感心して帰ってゆくと、主水正はその壺をしまいだしたが、とり出す時の、あの、いかにも名品を扱うような、注意深い態度とうってかわって。