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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

江戸ぜんたいが黄色く蒸れて、ムッとする暑さだ。

だが、橋の下は別世界――河原には涼風が立って、わりに凌ぎよい。

ゲゲッ! と咽喉の奥で蛙が鳴くような、一風変わった笑いを笑った丹下左膳。

「小僧、チョビ安とか申したナ。前へ出ろ」

「あい」

と答えたが、チョビ安、かあいい顔に、用心の眼をきらめかせて、

「だが、うっかり前へ出られないよ。幸い求めしこれなる一刀斬れ味試さんと存ぜしやさき、デデン……なんて、すげえなア。嫌だ、いやだ」

左膳は苦笑して、

「おめえ、おとなか子供かわからねえ口をきくなあ」

「口だけ、おいらより十年ほどさきに生まれたんだとさ」

「そうだろう」左膳は、左手で胸をくつろげて、河風を入れながら、

「誰も小僧を斬ろうたア言わねえ。ササ、もそっとこっちへ来い。年齢はいくつだ」

チョビ安は、裾をうしろへ撥ね、キチンとならべた小さな膝頭へ両手をついて、

「あててみな」

「九つか。十か」

「ウンニャ、八つだい」

「いつから悪いことをするようになった」

「おい、おい、おさむれえさん。人聞きのわりいことは言いっこなし!」

「だが、貴様、置き引きが稼業だというじゃあねえか」