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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

邸内では、だれもこの、裏庭にはらんでいる暴風雨に気づかぬらしく、夜とともに静まりかえっている。病先生のお部屋のあたりに、ぱっと灯が洩れているだけで、さっきまで明りの滲んでいた部屋部屋も、ひとつずつ暗くなってゆく。

左膳は、口の中で何やら唸りながら、源三郎と丹波を交互に見くらべて、釘づけになっているのだ。二人は、左膳と与吉の来ていることなど、もとより意識にないらしい。

と、たちまち、ふしぎなことが起こったのだ。

丹波の口から、低い長い呻き声が流れ出たかと思うと……かれ丹波、まるで朽ち木が倒れるように、うしろにのけぞって、ドサッ! 地ひびき打って仰向けに倒れた。

かた手に抜刀をさげたまま――そして、草に仰臥したなり、その大兵のからだは長々と伸びきって、すぐ眠りにはいったかのよう……丸太のごとくうごかない。

むろん斬られたのではない。気に負けたのである。

源三郎は、何ごともなかったように、その丹波のようすを見守っている。

左膳が、ノッソリと、その前に進み出た。

八

「オウ、若えの」

と左膳は、源三郎へ顎をしゃくって、

「この大男は、じぶんでひっくりけえったんだなア」