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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「ナニ、峰先生が――」

与吉の話に、深夜の道場が、一時に沸き立った。それでも、瀕死の老先生や、お蓮様や萩乃のいる奥には知らせまいと、一同、手早く帯しめなおして、

「日本一の乱暴者が二人、斬り合っておりますから、そのおつもりで……」

という与吉の言葉に、若い連中せせら笑いながら、手に手に大刀をひっ掴んで、うら庭へ――。

闇黒から生まれたように駈けつけて来る、おおぜいの跫音……左膳がそれに耳をやって、

「源三郎、じゃまがへえりそうだナ」

と言った瞬間、地を蹴って浮いた伊賀の暴れん坊、左膳の脇腹めがけて斬りこんだ一刀……ガッ! と音のしたのは、濡れ燕がそれを払ったので、火打ちのように、青い火花が咲き散った。

「ウム、丹下左膳に悪寒をおぼえさせるのア、おめえばかりだぞ」

言いながら左膳、おろした刀をそのまま片手突きに、風のごとく踏みこんだのを、さすがは柳生の若様、パパッと逃げて空を突かせつつ……フと気がつくと、二人の周囲をぐるりかこんで、一面の剣輪、剣林――。

筑紫の不知火が江戸に燃えたかと見える、司馬道場の同勢だ。

気を失った峰丹波の身体は、手早く家内へ運んだとみえて、そこらになかった。