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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

そこで武兵衛を先頭に立てて西小寺の境内まで行って見ると寒月に照らされた銀杏の根もとに年古る狐がしかも三匹血を吐きながら斃れていたが、それはもちろん公孫樹のお夏と、小手抜小女郎と法蔵寺鈍二兵衛とで、さすが名物の中津川の三狐も、武兵衛の法力には勝つことが出来ず憐れにも自滅をしたのであった。

苗木の城内の天主の間には浪人組の猛者を始め、城内の有名な勇士の面々綺羅星の如く居流れていた。

警蹕の声やがて高く、正面の襖左右に開いて上座に悠然と現われ出たのは城主花村甚五衛門である。平素は家臣の面々と膝を交えて談笑し肘押しぐらいはするのであるが、一旦何事かある時には威厳忽ち四辺を払って堂々たる一城の城主の貫禄、いかなる勇士をも圧服する。これがすなわち大器量人の大器量人たる所以でもあろう。

甚五衛門は平伏したまま頭を上げない家臣の様子を静かにズラリと眺め廻わしたが、

「今日の評定は他でもない。その方達いずれも存じおる如く我らが城下を騒がしたるあの恐ろしい熱病をたった一人で退治たるところのはだか武兵衛という壮士、身分は卑しき者ながらその大功は没し難い。ついては誉れある浪人組のその一人に加えたくこの甚五衛門は思いおれど一同の存意もいかがかとここに評定を開いた次第。