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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
ウーム、よいところへ気が付いた」
彼は早速にもこう思って、尚熱心に右衛門の揮う木刀の切先に眼を付けた。
「それにしても彼ら香具師どもは、ただに普通の香具師であろうか? それとも香具師に身を変えている野武士盗賊ではあるまいか……あまりに尋常の香具師としては、不審の廉が多過ぎる」彼にはこうも思われた。
そうして彼のこの考えは正しく当たっていたのであった。誠に彼ら香具師達は、尋常普通の香具師ではなくて、弾正太夫の部下の者であった。
弾正太夫とはいかなる者か? それは一個の豪傑であって、昔の身分は美濃の梟雄、斎藤道三の執事職の脇屋刑部と云った武士。すなわち一城の主人であったが、主人の暴悪に愛想をつかし、自分から無断で国を立ち退き、宮仕えこそ煩わしと、そのまま賤民の群に入り、部下を作ること四千余人。美濃、飛騨、信濃を縄張りとして、運上によって営む生活は十万石の大名にも勝り、部下に信頼されることも、武士時代より一層厚く、いわば賤民の王として、不思議の勢力を揮っている巨然たる草莽の怪傑なのであったが、この怪傑の群にはいった数馬の運命はどうなるであろう。
弾正太夫の領土