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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

てくださるように取り持たないものでもないけれどもな」

狡猾な企みを胸に隠して紋十郎は猫撫声で白痴の粂太をそそのかすのであった。

粂太はにわかに元気付き誓うように熱心に云うのであった。

「俺らお前の頼みを聞く。俺ら何んでもして見せる!」

「よし。そいつは有難い。依頼というは他でもない。お前はそういう人間だから――平ったく云やあ白痴いから皆の者が油断してどんな所へはいって行こうと叱る者もなけりゃ怪しむ者もない。そこがこっちの付け目なのだが、つまり吟味所へ忍び込んで、オースチン老師の絵図面を……」

「ああその絵図面をどうするんだい?」

「こっそり盗んで貰いたいのだ」

「そんな事ならいつでもやる。いと易いことじゃいつでもやる」

「そうか、そいつあ豪勢だ。それじゃきっと頼んだぞ」

「いいとも。俺ら頼まれた――その代わり俺らの頼みもよ」

「いいともきっと頼まれた」紋十郎はニタリと笑い、「そう決まったら早く帰って今夜はグッスリ寝るがいい。父が探していたっけよ」

「それじゃ俺ら帰るとしよう」

粂太は家の方へ帰って行った。

紋十郎は尚しばらく吟味所の様子を眺めていたが、内部の様子を知ろうとしてかピッタリ壁へ耳を付けた。