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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
こうしてしばらく経った時、花桐が一人帰って来て、
「島君さんは頭痛がするとかで、奥のお庭の離れ座敷に、伏せっておいででござります」
と、愛想気なく知らせて来た時には、紋十郎はカッとなり、器物でも投げそうな見幕であったが、何んと思ったかカラカラと笑い、
「よいわ。来るのが厭じゃというなら、こっちからそっちへ行くまでじゃ。いやそういう権高者が、かえって俺には面白い、さあ皆も来るがよいわ。頭痛見舞いに参るとしようぞ」
彼はヒョロヒョロと立ち上がり、遊女や部下に介抱されながら、その島君の伏せっているという、離れ座敷へ出かけて行った。
後は嵐が吹き過ぎたように、この室は森然と静かである。
一人残った花桐は、淡い悲哀にでも捉えられたように、じっと俯向いて考えていたが、離れ座敷で呼び立てる声が、幾度も騒々しく聞こえて来るので、厭々ながら立ち上がったとたんに迎いに来た千寿がはいって来た。
「おや花桐さん浮かない顔して、何を考えておいでなさる?」
「何も考えてはおりませぬ。好かないお方の座敷へ出て、追従口を利くことがつくづく厭でござんした故、ここに残っておりましたまで」