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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

明朝鐘を合図に

こう云いすてるとオースチン師は、端然と形を改めて、白虎太郎の正面へグイと膝を進めたのである。

明朝鐘を合図に

怪しい幽霊を映し出す機械――すなわち今日の幻灯をもって守衛どもを驚かせ、甘々部屋から誘惑し、鳳凰の間まで連れて来るや活をもって息吹き返させ、さらにオースチン師の催眠術をもって睡眠に入れられた白虎太郎は今や昏々と眠っている。

「さて数馬殿ご覧うじろ。愚僧これより白虎太郎めを嬲り物にしてお目に掛ける」

こう云うとグイと膝を進め右の拳をひょいと出し人差し指をつと起こした。

「これ白虎太郎、これが解るかの? 高い一本の樹じゃろうがの」

すると太郎は眼を閉じたまま顔を高く上へ向け、さもさも高い大木を仰ぎ見るような様子をしたが、

「はい見えます。よく見えます。ほんとに高い木でございますなア」

「お前の方へ倒れて行くぞ。それそれお前は下敷きにされるぞ」

すると太郎は狼狽したように両手を頭上で打ち振った。「やあ大木めが倒れて来る! 逃げなければならない、逃げなければならない!」

逃げようとしてくのであったが眠っている体は自由にならず、コロコロ転がるばかりであった。