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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

ちょいとここで考えてから不意に言葉の調子を砕き、「これ太郎幾歳になるな?」こんな事を訊き出した。

「三十五歳にござります」太郎の答えは真面目である。

「ふうむ、三十五か、男盛りだの。面白い恋物語もあるだろうの?」

「ハイ、ないこともございませぬ」

「そうであろうそうであろう、ひとつ惚気でも聞かしてくれぬかの」

聞いている数馬は眼を丸くした。森厳真面目のオースチン老師にも似ず何んだろういったいこの問答は! 彼は思わず噴き出そうとしたが老師の様子が真剣なので浮雲く笑いを引っ込ませた。

問答はこんな塩梅に進んで行く。

「ハイ、惚気でございますか。お聞かせ致してもよろしゅうござります」

「おお聞かせてくれるかな、ところで一つ註文がある。どうじゃな聞いてくれるかな?」

「ハイ、お聞き致しましょう。どんな註文でござりましょう?」

「芳江姫の事じゃがの」

「へ、芳江姫とおっしゃると? ああ解りました解りました。青竜二郎とこの私とで誘惑した美しい乙女……あの乙女のことでござりましょうな?」

「そうだそうだその乙女のことじゃ。どうだな大変な別嬪ではないかな」

「乙姫様か弁天様か素晴らしい料物でございました。