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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「権六、枯木を集めて参れ」
「はっ」と云って権六は落ちている枯木をあさり出した。東条数馬も手を貸したので、瞬間に枯木の山が楠の木の根もとへ築かれた。
冠者が用意の燧石を出し、カチカチと打って火を出すと、待ち構えていた権六がすぐにそれを枯葉へ移す。火はやがて枯木へ燃え付いたが続いて楠の木へ燃え移った。楠の木は油の多い木だ。パチパチと八方へ火の粉を飛ばせ見る間に猛火となってしまった。
千日岡は白山のうちでも眺望絶佳の所であった。そこは峨々たる岩山で、所々に巨大な窟があった。その中の一つの千疋洞に百地三太夫と才蔵とが久しい前から住んでいるのであった。
今、二人は岩の上の獣の皮の敷いてある上へ、暢気そうに腰をおろしながら、四方山の話に余念がない。
「なんと才蔵や退屈ではないかな?」
三太夫は笑いながら才蔵へ云った。
「はい。いいえお師匠様。別に退屈も致しませぬ」
不思議そうに才蔵は云う。
「退屈しないとは感心だの。つまり年が若いからであろう、私はつくづく退屈したよ」
「何んにご退屈なされました?」
「云うまでもなくこの山にじゃ」
「それではここを引き上げてどこぞへ参ろうではござりませぬか」