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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
二階の絹商人
「それから同盟を勧誘るのさ」
「そうだそうだ、そうなくてはならない」
「この役目はむずかしい」
「掻い撫での者はやられない」
「で、誰をやったものかな?」
「お前が行くか俺が行くかだ」
「なるほど」
と云って天丸左陣はポンと膝を叩いたが、
「それじゃお前に行って貰おう」
「うんいいとも俺が行こう」
人丸左陣は潔く云った。
物語は越後へ移る。
黒姫山の麓に近く古田という駅路があった。温泉などが湧き出してまことに住みよい土地であったが、黒姫山の山寨から地丸左陣の手下の者が時々大挙して劫掠に来るので、村は富むことが出来なかった。
ある日、若い、非常に美男の、絹商人が村へ来たが、持っている絹を売ろうともせず、温泉宿を兼ねた土地の豪農、助左衛門方へ泊まったかと思うと、近頃京都の親類先から遊びに来ていたお銀という娘と、どうやら懇意になったらしいと、狭い村のことではあり、すぐに評判が立ってしまった。
「変な噂が立ったそうで、あなたにはご迷惑でございましょうね?」
ある日、二階の絹商人――その名は粂太郎というのであったが――がその座敷で向かい合った時、こう云って粂太郎は笑った。
「いいえ妾は構いませんがあなたこそご迷惑でございましょうね」