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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「さあそれがどうなるものやら、妾にも解らないのでございますわ」
「それは不思議でございますね」
「はい不思議でございます」
「それに致しても京都から、こんな山奥の古田などへ何んでおいでなされました?」
「さあ何んで参りましたやら、妾にも解らないのでござります」
「それは不思議でございますね」
「はい不思議でございます」
「ハハハハ、これは面白い!」
「ホホホホ、面白うございましょう」
「さては私をお嬲りなさるそうな」
粂太郎はムッとした。
しかしお銀は驚きもせず、ただ艶かに笑うばかりである。
林で誰か木を伐っている。カーン、カーンとその音が秋の空気へ響き渡り、湯槽へ落ちる湯の音が、トコトコトコトコと聞こえて来る。山里らしい静けさである。
「妾などよりあなたこそ、こんな辺鄙な山里へ、何んでおいでなされました」
不思議そうにお銀は訊いた。
「はい、そのことでございますか、実は故郷の名産の甲斐絹を持って諸方を廻わり、付近の小千谷まで参りましたついで、温泉があると聞きまして、やって参ったのでございますよ」
お銀粂太郎
「おおそれではあなたのお故郷は、あの甲州でございますか」
「甲斐の甲府でございます」