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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

れるものかよく心得ておろうがの。さあ足を出せ足を出せ! その足で館を逃げようとしたな、その足を打ち折ってやるほどに、さあ神妙に足を出せ!」

罵る長者の声に混って絹を裂くような誰袖の声が飄客の群で賑わっている戸外へまでも響いて行った。

「さて誰袖の折檻も今日はこのくらいにして置いて、次の処刑に移ろうかい。やいやい加藤次、白萩めをもっと縁近く曳いて参れ!」

長者の言葉が終えもせぬうちに、加藤次の荒らくれた右の手が白萩の襟がみを引っ掴んだ。勝れて美しく弱々しい白萩の体は犬ころのようにはたと縁先へ転がされた。

「なあ白萩」と、珍らしく、長者は訓すように優しく云った。

「私が抱えの女のうち、鳰鳥に次いで美しいのは、そなた、白萩だと思えばこそ大目に見てはいたけれど、近頃のように私の云うことをきかないでは、他の女達へのみせしめもあり、黙っていることは最早ならぬ……お前の情夫は私の嫌いな、あの狐池如来衛門、それだによってこれまでも、如来衛門は見捨ててしまえ、逢ってはいけぬと云い渡しても、あいあいと口先で云うばかりで、見捨てようとはようしない。これが普通の男なら決して無理に堰こうとはしない。