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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
小枝姫の申出
その時、飯場の女の群から一人の乙女が進み出た。
小枝姫の申出
飯場女の群の中からつと進み出た一人の乙女、それを見ると地丸左陣は思わずその眼を見開いた。
これこそ真の処女である! 着ている衣裳は粗末ながらそれに何んの累もされず玲瓏と澄み切ったその容貌は、愛と威厳と美との女神、吉祥天女さながらである。年はおよそ十七ばかり、地丸左陣を凝然と見詰め、臆じも恐れもせず立っている。
地丸左陣は自ら襟を正さざるを得なかった。
「小枝姫でござるかな」まず慇懃に云ったものである。
「はい小枝でございます」――音楽のように美しい声だ。
「さりとも知らずとんだご無礼、平にご用捨くださるよう」
「いえ」小枝は優しく微笑を浮かべ、「飯場は面白うございました。善い方ばかり集まっておられて、よい経験を致しまして、ほんとに嬉しゅうございました」
「ははあさようでござりましたか。いや都の上方には下様のことが珍らしくあるいはそうかも知れませぬ」
「ただ妾と致しまして、即刻改良て貰いたいことが、幾個かあるのでございます」
「どうぞお聞かせくださいますよう」
「どうも少々食べ物がお粗末過ぎるようでございます」