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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
奇々怪々の伝授
……著者は誰だか解らない。ただし支那の太古人らしく、神農時代の人物らしい。尭舜禹湯の時代を過ぎ、周代を経て春秋の世となり、老子孔子孟子の徒も、この書の恩恵を蒙ったらしい。しかし、それらの誰よりもこの書の恩恵を蒙ったのは、他ならぬ大盗盗跖だ。そのため彼は支那四百余州、第一等の大盗賊となり、一生栄華にくらすことが出来た。……その後この書は我が朝に渡り、神代を経て奈良朝となり、蘇我入鹿が手に入れたため、大不敬罪をさえ犯そうとした。これこの書を悪用したもっとも憎むべき一人であるが、その後弓削道鏡が再び手に入れて悪逆を企て、後失脚して下野に流され、爾来しばらく行方を失い、あたら珍書も風塵にうずもれ姿を没するかと思われたおりから、忽然一代の聖雄がこの書をひっさげて世に現われた。他ならぬ楠正成公だ。泣き男の詭計を用いたのも、糞尿の計を用いたのも、わずか百五十人の寡兵をもって金剛山に立てこもり、北条二十万の大軍を堂々として破ったのも、この書がお手にあったればこそだ。こうして建武の中興成り、世も太平に向かおうとした。しかるに忽ち足利尊氏、反骨を抱いて虎視眈々、とうとう機を見て反き去り、ふたたび乱世戦国となったが、尊氏の最も恐れたのは、この書倶係震卦教だ。