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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

ただし人界の者どもは、わしのことをいつともなく木食仙人と呼んでいる。ところで、世界に人は多いが、倶係震卦教の文言を、解き明すことの出来るものは、わし以外には一人もない。それには深い理由がある。しかしそれも今は云うまい。……それはとにかく十年前、楠多門正勝が、聖典探索に向かう際、わしは彼と約束をした。今や足利の武威衰え、世は苅菰の乱世である。いまこそ菊水の旗を挙げ、天朝を恢復すべき時である。もしその方に幸運あって聖典を得ることが出来たなら、中の迷語の解釈をこの老人が授けようとな。……その多門亡き今は、代わってそちに授けなければならない。何んと女子よ、多門の代わりに、倶係震卦教の奥義を極わめ、天朝恢復の大望に、加担を致す気はないかな?」

「はい」

と云うと鳰鳥は、一膝退がって大地に手をつき、まず恭しく一礼したが、

「妾こそは鳰鳥と申し、父を足利将軍のため、ムザムザ討たれたものにございます。もっとも直接の討っ手といえば木曽義明ではございますが、命を下したは足利将軍、されば妾の身にとっては、不倶戴天の父の仇。お言葉なくとも生涯の中には、一太刀なりと怨みたいと、祈っていたものでございます。