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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

幸い今日はよい折がら、お差し支えないようでございましたらお身の上をお話しくださるよう」

「お尋ねで恐縮いたします」侍は恭しく頭を下げ、「とくより申さねばならぬ筈を、今日まで物語りも致しませず、さぞかし物の心得のない不作法者とも覚し召しお蔑すみなされたでございましょうが、何をお隠し致しましょう、私事は木曽家の執事花村甚五衛門の長男の花村右門と申す者……」

「何※(感嘆符疑問符、1-8-78)」と婦はそれを聞くとその顔色を颯と変え、「それではあなたには木曽のお館義明公の執事職主人勝りの智恵者といわれた花村殿のご子息の右門殿と申されるか」

右門は忽ち顔色を変えた婦の様子を審かし気に、じろりとばかり眺めたが、

「いかにも木曽家の花村右門。忽ち顔色を変えられたは何か理由でもござるかな?」

婦は心を取り直したか、変わった顔色を元へ返し、さり気ない様子に微笑をした。

「何んの理由などございますものか。木曽家と申せば大領主、そのご家中と聞きましたので、ただ感心を致したまで、他に不思議はございません――それにしても木曽家のご家臣がどういう訳で篠井あたりを旅しておられたのでございます?」