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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

百鬼夜行

一

同心は顔を見合わせた。

「宮仕えして禄を食んでおれば、心にもない厭アなことも。……」

戸外では柿の葉が散っていて、陽の中にその実が赤く照っていた。

百鬼夜行

一

その日の夜の深更となった。

逃げ水屋敷の建物の一つ、小高い丘の上に建てられてある、イスパニア風の望楼の窓から、外の様子を眺めながら、囁き合っている二人があった。

「逃げ水屋敷と申すゆえ、内へはいったらどんなにか奇怪? そう思って期待して参りましたところ、向こうに一軒こっちに一軒、いろいろの異国の建物が、それも大して大きくもない奴が、書院造りのこれは広大な、日本家屋を中心にして、建ててあるばかりとは驚きましたな」

こういったのは浦島太郎の、仮装に仮面をつけた男で、肩がかがんで猫背をなしていた。

「遠近法とやらを利用して、一軒一軒のそれらの建物が、遠くより望めばどこから眺めても、渾然と一つに綜合され、一大屋敷に見られるが、構内へはいればバラバラに別れて、別々の小さな建物となる。――というところに平賀源内の、鬼才が窺われるということでござるよ。近寄るに従って一つ一つ、建物が消えてなくなるのも、遠近法から来ているそうで」