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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

十二

ムッツリといつまでも黙り込んで、考えているのは当然といえよう。

が、しかし彼としては、もうこの話を聞いた時から、兇悪の心で大体のところは、こうと定めているのであった。

(三人ながら眠らせてしまおう)

範之丞はいうまでもなく、織江もお吉も殺してしまおう!

「司馬氏」

と九十郎はいった。

「服部兄妹を貴殿屋敷へ、誘き入れられたご好意については、九十郎お礼申す。そこで……」

とここで一考えしたが、

「とてものことに該二人を、湖畔へ誘き出しくださるまいか」

「いと易いこと」

と又助はいった。

「が、湖畔でどうなさるな?」

「ぶった切って水葬礼、一切後腹やめぬよう、湖へ沈めてしまいましょう。……櫛木氏」

と団八を見た。

十二

「貴殿にもお吉を湖のほとりへ、今夜誘き出してくだされい」

「よろしゅうござる、よろしゅうござる」

引け目があるので櫛木団八は、一も二もなく引き受けていった。

「拙者かならず引き出しましょう。……が、まさかお吉殿を……」

「何んでござるな」

白い眼でジロリ、九十郎は団八を睨んだ。

「まさかお吉を……何んでござるな?」

「ナ、何んでもござらぬが……従来親しく連れ添われた婦人……まさかに、まさかに……のう」