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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

五

「あいつは又助に任せて置け」

(いや)と次の瞬間に思った。

(手つかずの処女を、田舎浪人の又助ごときに!)

惜しい気がムラムラと起こって来た。

(俺が思いをかけた女だったっけ)

「新助見な、変なことがあるぜ」

「ナールほど、こいつア変だ。俺らのお株を奪っていやがる」

「女を誘拐かし担いで行く、俺らの昔の商売だったっけなあ」

「素人にやられてたまるものか」

「それもよ、ご両人の眼の前で」

「それも二本差しがやってるんだ」

「おいどうする?」

「邪魔しようぜ」

「因縁つけていたぶるか」

「玉アこっちへ捲き上げるのよ」

「やろうぜ新助」

「外伝、やれやれ」

五

蜆っ貝を掘りそこない、ブラブラ帰って来た新助たちであった。

城下外れまでやって来ると、芒原の方から若侍の群が、女を担いで走って来た。

見逃がせないことになったのである。

「こいつらア!」

と外伝が声を上げ、行く手を遮り両手を拡げた。

「見りゃア立派なお武家様方、悪ふざけかは知りませんが、悪ふざけにも程度がある、女を担いでおいでなさるなんざア、あくど過ぎまさア、あくど過ぎらい! ……放してやりなせえ、放してやれやれ!」

「もしもお放しなされぬなら」