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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
小諸の城主一万五千石、牧野遠江守の城へ向かって、発足したところの一行なのであるが、それが塩尻にとどまって、五日というもの発しないのは、遠江守領内に、百姓一揆勃発し、それが岩村田侯内藤豊後守の、領内にまでも波及して、北佐久一円物情騒然、そこへ乗り込んでは危険というので、ここに滞留しているのであり、その様子をさぐるべく、白須源吾が命を受け、一昨日その方面へ出かけて行ったが、今帰って来て復命したのであった。
一応帳面を読み終ると、貝十郎は沈思した。
(蔭の首謀者が問題だ。あるのであろうかないのであろうか? あるとすれば誰だろう?)
この時裏口の木戸をあけ、町人姿の桐島伴作が、忍びやかにはいって来た。
「桐島氏か、異変はなかったか?」
「昨日のままにござります」
「人数に変りあるまいな?」
「冬次郎様に戸ヶ崎氏、その門下の清三郎とやら、他に例の三人の無頼が……」
「小諸かないしは岩村田の方へ、出かけて行くらしい様子はないか?」
「そのような様子ござりませぬ」
「浪人者など出入りせぬか?」
「見受けませんでござりました」
「では依然として我ら一行を、狙っているに過ぎないのだな?」