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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

十七

「牽制いたして暇どらせ、その間に伴作を遁がしましたまで」

「児戯! とはいえ引っかかったぞ! ……三挺の駕籠の主は誰じゃ※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

冬次郎は彼らしく突発的に、話の方向を一変した。

「高島の城下本陣柊屋、そこから舁き出された二挺の駕籠と……」

「その一挺には貝十郎、乗りおりましてござります」

「もう一挺の駕籠には田沼めが? ……」

「かくなりましては万事あからさまに! ……御意、田沼様その駕籠に……」

「高島城より出でたる駕籠には?」

「狂女お浦が、ままごと狂女の……」

「さてこそ」

とはじめて熊太郎が横からこの時言葉を※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)んだ。

「女の声して駕籠の中にて、独言申しておりましたが……」

「さるにてもお浦を高島城より……一人はなして舁き出だしたは?」

「何でもござらぬ狂女ゆえに、あの日城中を彷徨いたし、出立の間際に行方不明、それをようやくあの時とらえ、城の方々大事をとり、本陣までお送りくだされましたまで」

「さるにても貝十郎何んと思って、田沼を本陣柊屋から?」

「舁き出しましたは殿の御眼を、眩まそうためにござりました」