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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
皮膚など茶渋を刷いたようで、ところどころに苔のような斑点が見えるのは、時代がついているのでしょう。
髪は、白髪をとおりこして薄い金いろです。そいつを合総にとりあげて、口をもぐもぐさせながら、矢立と筆をつき出したのを、対馬守はうなずきつつ受け取って、
「明年の日光御用、当藩に申し聞けられ候も、御承知の小禄、困却このことに候、腹掻っさばき、御先祖のまつりを絶てばとて、家稷に対し公儀に対し申し訳相立たず、いかにも無念――」
対馬守がそこまで書くのを、子供のようににじりよって、わきからのぞきこんでいた一風宗匠、やにわに筆をもぎとって、
「短気はそんき、とくがわの難題、なにおそれんや」
達筆です。一気に書き流した一風宗匠、筆をカラリと捨てて、ニコニコしている。
対馬守はせきこんで、その筆を拾い上げ、
「宗匠、遺憾ながら事態を解せず。剣力、膂力をもって処せんには、あに怖れんや。ただ金力なきをいかんせん」
一風宗匠は依然として、植物性の静かな微笑をふくみ、
「風には木立ち、雨には傘、物それぞれに防ぎの手あるものぞかし、金の入用には金さえあらば、吹く雨風も柳に風、蛙のつらに雨じゃぞよ」