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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

みんな円座から乗りだして、肩を四角くしている。

対馬守は、筆談をつづけて、

「その儀事実とあらば、藩主たる予の今まで知らざりしこと、まことに合点ゆかず」

一風宗匠の応答……。

「用なきときに子孫に知らすれば、無駄使いするは必定。さすれば、かかる場合もやと、まさかの役に立てんと隠しおきたる御先君の思召し相立たずそうろうことと相なり――」

苦笑した対馬守は、

「されど、天、宗匠に嘉するに稀有の寿命をもってしたれば、過なかりしも、もし宗匠にして短命なりせば、いつの日誰によってかこれを知らん。家中のもの何人も知らずば、大金いたずらに土中に埋ずもれんのみ。心得難きことなり」

「その不都合は万々これなし。迂生臨終のさいは、殿に言上いたすべき心組みに候いき」

濶然と哄笑した一風は、なおも筆を走らせ、

「大金の所在は、壺中にあり」

急きこんだ柳生対馬守、

「壺中にありとは、これいかに」

「埋没の個処を詳細紙面にしるし、これをこけ猿の壺中に封じあるものなり」

そのこけ猿の茶壺は、弟源三郎に持たせて、江戸へやってしまった!

対馬守は、大いにあわてて、紙を掴みとるなり、大書しました。