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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
道理で――」
「それを知らずに、源三郎様につけて差しあげたのは、近ごろ不覚千万!」
「迂濶のいたりと申して、殿すら御存じなかったのじゃから、だれの責任というのでもござらぬ。あの老いぼれの一風が、もうすこし早くお耳に入れればよいものを……」
「だが、かような問題が起こらねば、一風は死ぬ時まで、黙っておる所存であったというから――」
「おいっ! おのおの方、司馬道場への婿引出は、何もあの壺とは限らぬのだ。なんでもよいわけのもの。ただ、絶大の好意を示す方便として、御当家においてもっとも重んずる宝物、かのこけ猿を進呈したというまでのことじゃ。今のうちなら、取り戻すことも容易でござろう」
「そうだっ! 是が非でも壺をとり返せっ!」
対馬守は、もとよりこの意見です。なんとかして壺を手に入れねばならぬ!
さっそく下山して、一間に休息させてあった田丸主水正を呼び出し、きいてみると、
「ハッ。金魚の……イエ、日光御用の儀にとりまぎれて、言上がおくれましたが、道中宰領安積玄心斎が江戸屋敷に出頭しての話によりますと、まだ源三郎様の御一行は、江戸の入口品川にとどまっていらっしゃる模様で、それにつきましては、司馬道場のほうと、何か話にくいちがいがありますようで――」