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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

すべて喪中に使う帳簿は紙を縦にふたつ折りにして、その口のほうを上に向けてとじ、帳の綴り糸も、結び切りにするのが、古来の法で、普通とは逆に、奥から書きはじめて初めにかえるのである。

大名、旗下、名ある剣客等の弔問、ひきもきらず、そのたびに群衆がざわめいて、道をひらく。土下座する。えらい騒ぎだ。

萩乃は、奥の一間に、ひとり静かに悲しみに服しているものとみえる。お蓮さまも、表面だけは殊勝げに、しきりに居間で珠数をつまぐりながら、葬服の着つけでもしているのであろう。ふたりとも弔客や弟子たちの右往左往するおもて座敷のほうには、見えなかった。

やがてのことに、わっとひときわ高く、諸人のどよめきがあがったのは、いよいよ吉凶禍福につけ、司馬道場の名物の撒銭がはじまったのである。

江都評判の不知火銭……。

白無垢の麻裃をつけた峰丹波、白木の三宝にお捻りを山と積み上げて、門前に組みあげた櫓のうえに突っ立ち、

「これより、撒きます――なにとぞ皆さん、ともに、故先生の御冥福をお祈りくださるよう」

どなりました。りっぱな恰幅。よくとおる声だ。

すると、一時に、お念仏やお題目の声が、豪雨のように沸き立って、