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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

じぶんはどんなことをしても、必ずこの青年の心とからだを手に入れよう……。

じぶんが、この自分の豊満な魅力を用いて近づく時、それをしりぞけた男性は、今まで一人もないのだから――死んだ司馬老先生然り、この峰丹波然り……。

焼香の場です。おのずと顔にうかぶほほえみを消すのに、お蓮さまは、人知れず努力しなければなりませんでした。

この、お蓮様の心中を知らない丹波は、気が気じゃアない。

人もあろうに、選りに選って、とんでもないやつに御礼包みが落ちたものだ――柳生源三郎ということは、どうせ知れるにしても、せめては一刻も遅かれ、そのあいだに、なんとか対策を講じなくては……と、懸命に念じていると!

静かに起った柳生源三郎――。

袴の裾さばきも鮮かに、正面へ進んだ。焼香だ。

つまんでは拝んで、二度香をくべた源三郎、ふたつ続けて、音のない柏手をうちました。うち合わせる両の手をとめて、音を立てない。無音のかしわ手……。

これは、忍びの柏手といって、神式のとむらいにおける礼悼の正式作法で……まず、よほどの心得。

その粛然として、一糸みだれない行動に、一座は思わず無言のうちに、感嘆の視線をあつめています。