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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

お居間は、たたみ十二枚。上段の間で、つきあたりは金襖のはまっている違い棚、お床の間、左右とも無地の金ぶすまで、お引き手は総銀に、葵のお模様にきまっていた。

正面の御書院づくりの京間には、夏のうち、ついこの間までは七草を描いた萌黄紗のお障子が立っていたが、今はもう秋ぐちなので。縁を黒漆に塗った四尺のお障子が、ズラリ並んでいる。

まことにお見事……八代さまは、ズシリ、ズシリと歩いて、紺緞子二まい重ねのお褥にすわった。

お庭さきのうららかな日光に眼をほそめて、あーアッ、と大きな欠伸とともに、白地に葵の地紋のある綸子の寝巻の袖を、二の腕までまくって、ポリポリ掻いた。

現代ならここで、朝刊でも、金梨地か何かのほそ長い新聞入れに入れて、お前におすすめするところだが……二人のお子供小姓が、お手水のお道具をささげて、すり足ではいってきた。

さきのお小姓は、黒ぬりのお盥を奉じている。

あとの一人は、八寸の三宝に三種の歯みがき――塩、松脂、はみがきをのせて、お嗽ぎを申し入れる。

それから、お居間からずっと離れたお湯殿へいらせられて、朝の御入浴です。

相変わらず、垢すり旗下愚楽老人が、お待ち受けしていて、お流し申しあげる。