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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

もう、完全に左膳を隅へ追いつめたのですから、伊賀っぽう、めっぽう気が荒いんです。

一人がそうどなった。

その尾について、ほかのひとりが、

「夜が明けるぞ、夜が」

「下手の考え休むに似たり。ええ面倒だ。小僧の首をもらってしまえ」

たちさわぐ部下を制した高大之進覆面の眼を、得意げに輝かせて、

「なかなか御決心がつかぬとみえますな。よろしい、拙者がいま、十まで数を数えますから、その間に御返事をねがいたい」

と、チョビ安をおさえつけている侍へ向かい、

「よいか、おれが十まで数えても、うんともすんともいわなかったら、気の毒だが、その子供の首をひと刺しにナ……」

「心得ました。十のお声と同時にブツリ刺し通してもかまわないのですね」

「そうだ。十の声を聞いたら、やっちまえ」

シインとした中で、やおら左膳に向きなおった高大之進は、きりっとした声で、数えはじめました。太く、低く、静かに……。

一、二、三、四――五――。

ゆっくり間をおいて、

「六……」

誰かが、エヘン! と、咳ばらいをした。

「七――」

左膳の焦慮は眼に見えてきた。娘一人に婿八人、各方面から、この壺をねらう者の多いなかに、片腕の孤剣を持って、よくここまでまもり通してきたものを、今むざむざ……。