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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

渡り廊下でつづいた別棟に、お蓮様、丹波をはじめ道場の一派、われ関せず焉とばかり、ひっそり閑と暮らしているんです。

売った喧嘩を買ってくれないほど、はりあいの抜けることはない。

源三郎を取り巻く伊賀の若侍たちも、拍子抜けがして――。

暴れくたびれ。

退屈。

あう――ウア! 欠伸の合唱、源三郎の欠伸と門之丞の欠伸とがいっしょだったので、源三郎自嘲的な笑いを洩らし、

「秋晴れだナ。馬に乗りたい」

と言った。

「結構ですな、チトお気ばらしに……」

「余は、江戸はくらい。遠乗りにはどの方面がよかろうかな?」

「拙者もよくは存じませぬが、まず墨堤……いかがで?」

「ま、よかろう、馬ひけ」

「御意。供は?」

「其方と、玄心斎と、大八と、三人でよい」

こうしたわけで、若さと力を持ちあつかった源三郎、轡を並べて、妻恋坂の道場を後に――。

空には、鱗のような雲の影が、ゆるやかに動いていました。

二

西北から、大きな緑の帯のような隅田川が、武蔵と下総の間を流れている……はるかに、富士と筑波を両方にひかえて。

昼ながら、秋の狭霧が静かに罩めわたって、まるで水面から、かすかに湯気があがっているように見えるのだった。