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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「退げましょうか」

源三郎の言葉に、玄心斎と大八は、懸命に眼くばせして、死んでもこの座を起たない申しあわせ。

少女のように、恥じらいをふくんで笑い崩れたお蓮様。

「いえ、誰がいても、思いきって言いますけれど、ねえ、源さま、いつかのお話は――」

「ナ、なんです、いつかの話とは?」

「あたしとしては、あなたが道場のお跡目になおるに、なんの異存もございませんけれど、ただ、そのお婿さんの相手が、あの萩乃ではなく、このあたしでさえあれば――」

「またさような馬鹿馬鹿しいことを!」

「でもね、源三郎さま、いま此寮には、不知火流の免許取りばかりが、十五人ほどいっしょに来ているんでございますよ。よくお考えにならなければ、御損じゃないかと……」

「フン! その十五人が、またたくまに、一人もおらんようになりましょう。ついでに母上、あなたも……」

言いながら源三郎は、今はじめて、夕陽に輝く山桜のような、このお蓮様の美しさに気がついたように、眼をしばたたいたのでした。

二

「とにかく、母上――」

言いかける源三郎を、お蓮様は、ヒラリと袂を上げて、打つような手つきをしながら、

「まあ! その母上だけは、どうぞ御勘弁を、ほほほほほ」