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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
すばしっこいやつじゃ。長屋じゅう、何ごとがおきたかと驚いておった、ハハハハハ」
いつも泰軒に用のある時には、ああしてトンガリ長屋の住居へ投げ文をして、呼び出すことになっているんです。
「当分、あの長屋におるつもりかの?」
忠相にきかれて、泰軒は哄笑一番、
「もう、ちょっとどこへも動けんようになったわい。みなが大事にしてくれるでな。愚楽さん、長屋の人たちは、そりゃアかわいいもんですなあ。しかし、わしの言うことなら、何を言うてもそのまま信じるから、うっかり冗談も言えん。吉さんが日本六十余州の将軍なら、この泰軒はトンガリ長屋の大将軍じゃ、ハハハハハ」
「宵のくち早くから、愚楽どのがお見えになってな」
と忠相は、ひとしきり笑いのしずまるのを待って、真顔に返り、
「例のこけ猿の件につき、君と三人でよく相談したいと言われるので、御足労をわずらわした次第だが……」
「アア、こけ猿か。だいぶゴチャゴチャやっとるようじゃのう――」
泰軒は軽く言って、膝もとにひきつけた貧乏徳利を手にとりあげ仰向いてグビリグビリ、燃料を補給しだした。
十
酒のこぼれた口ばたを、ぐいと手の甲で押しぬぐった泰軒は、