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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「そこで、御両所、こけ猿のことは、心配するな。そのうちにおれが、大岡のところへ持ってきてやる」

と言いました。

前にも一、二度、三人で相談して、なんとかしてあの壺を、こっちの手に入れなければならないと、話をきめたことがあるんです。

それは、この愚楽老人、城中では常に将軍家拝領の葵の紋つきを、ひきずるように着て、なんかといえばすぐ、背中の瘤にきせたそのあおいの紋をつきだし、これが見えぬかと威張っている。

上様のほかに、葵の紋のついたお羽織を着ているのは、愚楽一人ですから、みんな、ソレお羽織が来たといって、誰も愚楽のそばへ寄る者はない。

いつか……。

元禄の赤穂事件で有名な、あの松の廊下で。

愚楽老人、ちょうどすれちがったこの大岡忠相が、その長い羽織の裾を、踏みもしないのに踏んだと、わざと言いがかりをつけて、人眼をごまかして大岡様を別室へひきいれ、そこでこの壺に関して篤と密談をしたことがあります。

あの晩も、さっそく、泰軒をまじえて三人、ところも同じ今のこの座敷で、いろいろと策をねった。

で、その結果。

泰軒がひそかに壺の移動に眼をつけることになって、ああして、当時まだ吾妻橋下の河原に小屋をむすんでいた左膳のもとへ、泰軒が橋の上から矢文をはなち、それによって左膳も、壺ののむ柳生の埋宝の秘密をはじめて知ったという