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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

そんなことはどうでもいい。

さて――。

これからソロソロこけ猿の茶壺をあけにかかろう……と、左膳は舌なめずりをして、横に置いてある壺のほうへ、膝をむけなおしました。

いよいよ壺の秘密があかるみへ――!

数百年をへた地図には、はたしてどこに財宝が埋めてあると書いてあるだろう?

中国か、山陰か、甲州路か。それとも北海道? 満洲? ナニそんなところのはずはないが、江戸でないことだけはたしかです。

どことあっても左膳は、これからすぐ旅ごしらえ、濡れつばめを供に、かわいいチョビ安の手を引いて、発足する気でいるんだ。

左手が、一番上の風呂敷にかかった。ばらり、むすびめがほどける。

いつの世、いずくの世界でも、人をして真剣ならしむる我利物欲……そのとほうもない莫大な財産が、人に知られずどこかの地中に眠っている。おまけに、今それには、柳生一藩の生死浮沈がかかり、この江戸だけでも、何十人という人間が、眼の色かえてこの壺を、いや、壺の中の秘図を必死にねらっているのだ。

古今をつらぬく黄金の力――剣魔左膳の一眼に、異様な光が点じられた。

柳生の先祖の封じこめた埋宝箇処は、いまその左膳の左眼に読みとられようと、壺の中で、早く早くと、声なくあせっているように感じられる。