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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

とりどりの噂ありたるこけ猿は、かくのごとく、まさに、たしかに、当柳生家にもどり申し候。したがって当藩は、日光などお茶の子サイサイの大富豪に御座候。今後そのおつもりにて御交際くだされたく候……なんかと、さながら、そう大書してはりだしたように、その床の間のにせ猿が見えるのでした。

「今この竹田の持ってきた刀の包みを、向うへもっていけ」

小姓が、その長いやつをかかえて、勘定方と記録係のひかえている、あの庭の奥の離室へはこんでゆく。

ところへ。

別の取次ぎが顔を出して、

「御家老へ申しあげます。一石飛騨守様のお使いがお見えになりましてござります」

「おお、壺をかざったところでちょうどよかった。こちらへ」

一石飛騨守の使いというのは、まるまるとふとった男だった。はいってくるとすぐ、床の間の壺を見て、ひどくおどろいたようすだったが、持ってきた何やら大きな贈りものをさしだして、口上をのべはじめた。

「エエこのたび、柳生対馬守さまにおかせられては、二十年目にただ一度めぐりきたる光栄のお役、権現様御造営奉行におあたりになりましたる段、慶賀至極、恐悦のことに存じたてまつります。