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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

井上大膳亮様のお使いがおみえになりまして」

「千客万来、みな来ると困るなり」

なんて口の中で言いながら、田丸主水正、ひどくいい気もちそうだ。

井上大膳亮の臣、

「このたびは名誉ある……これが戦国の世ならば……神仏に祈願……水垢離……せめてはおたたみ奉行……これはほんのおしるしで。ところで、あれが有名なるこけ猿で?」

「御家老、山脇播磨守さまのおつかい……」

つぎ――宇都木図書頭。

つぎ……岡本能登守。

つぎっ! お早く願います。こみあいますから中ほどへ。これじゃアなんの話だかわからない。

この柳生の上屋敷の前は、各大名の使者にくっついてきた供の者、仲間、折助たちで押すな押すなの混雑。豆大福を売るおばあさんや、焼鳥屋の店が出て、顎紐をかけたお巡りさんが整理にあたっている。

主水正の若党儀作は、下足番で、声をからしています。

「エエろの十六――ろの十六。おうい、一石飛騨守様のお供ウ、お帰りだぞウッ」

なんて騒ぎ。

門前には、近所の人たちがぎっしりひしめいて、

「いま出てきたのは、河骨菱の御紋だから、堀口但馬様の御家臣だ」

「オ! 三つ追い揚羽の蝶がへえってゆく。