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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

玄心斎の言葉を、谷大八がうけとって、

「何事もない。まるで、狐につままれたようなものじゃ。で、安積の御老人をうながして、いま一度寮へ立ち帰ろうとすると!」

その時、寮のどこかに起こった怪火は、折りから暁の風になぶられて、みるみるうちに、数奇をこらした建物をひとなめ……。

「われら二人ではいかに立ち働いたとて、火の消しようもなく……」

「シテ、峰丹波の一党は?」

「それがふしぎなことには、火事になっても、どこにもおらんのじゃ。まるで空家が燃えたようなもの」

「それで、源三郎様は?」

この問いに、二人はぐっと声がつまり、うちうなだれて、

「火がしずまってから、御寝なされたお茶室と思われるあたりに、壺をいだいた一つの黒焦げの死体が、現われましたが」

「ナ、何! 若殿が御焼死?」

一同はワラワラと起ちあがって寝るまもぬがぬ稽古着の上から、手早く黒木綿の着物羽織に、袴をはき、それぞれ両刀をたばさんで、イヤモウ戦場のような騒ぎ。

「御師範代をはじめ、三人も手ききがそろっておられて、なんということを……」

「いや、その門之丞は、途中からふっといなくなったので――」

「ウム、門之丞があやしい。