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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
それをかたっぱしからひきだしてきて、昔から名高い薄茶の茶碗で、飯をかっこむやら、見事な軸へよせ書きをして笑い興じるやら……それというのも、こうでもしたら司馬家のほうから、今にも文句がでるかという肚だから、これでもか、これでもかといわんばかり、喧嘩を売ってきたのだ。
もてあました峰丹波とお蓮様、このうえは源三郎をおびきだして、ひと思いに亡き者にするよりほかはないと、門之丞をだきこんで、ああして葛飾の寮へひきよせたのだった。
その、伊賀の暴れん坊源三郎、とうとう彼らの策に乗り、今は真っくろこげの死体となった――?
ともしらぬ一同は、その日も帰らぬ源三郎を案じながらも、門之丞のことなどあれこれと話しあって、その晩は早く寝についた。
すると、ちょうど明け方近くだった。
彼らの寝ている部屋のそと、しめきった雨戸ごしの庭に、ヒヒン! とふた声、三声、さも悲しげな馬のいななきが聞こえた。
二
水の流れもとまるという真夜中すぎに、馬のなき声である。
五十嵐鉄十郎という人が、いちばん敷居際の、縁に近いところに寝ていた。
そのいななきを耳にして、最初に眼をさましたのは、この五十嵐鉄十郎だった。