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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「源三、おれを肩車に乗せてくれ」

懐中の手拭をとりだした左膳、

「とどくかとどかぬか知れぬが、なんとかして、あの天井の穴をふさがねばならぬ」

水さえはいらねば、そのあいだに脱出の方法も立つかも知れぬし、救いの手がのびてこようもはかられぬ。

源三郎は二つ返事で、左膳を肩に乗せた。

穴蔵の黒暗々裡に、ふしぎな水止め工作がはじまった。

若殿源三郎の肩に身をのせた左膳、片手を伸ばして、穴へ手拭をつめようとあせるのだが、天井に手が達しない。

もう一、二寸――。

「だめだ。貴公よりおれのほうが、背が高い。貴公、おれの肩車に乗ってくれ」

「ヤヤッ! そういう間も、もう水がたまりだしたぞ。土ふまずへ、ヒタヒタと水がきた」事実、部屋全体にうすく水が行きわたったらしく、線のほそい滝の水が、条々と……。

五

こんどは入れかわって。

左膳がしゃがみこみ、

「ごめん……」

と源三郎は、その左膳の首へまたぐらを入れた。

痩せた左膳のからだが、高々と源三郎をささえ上げる。両手を伸ばして伊賀の暴れん坊、

「やっぱりとどかぬ」

あせる指先を愚弄するように、天井は、まだ一、二寸高い。

「とびはねてくれぬか、左膳殿」