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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

と、チョビ安は、こけ猿の壺を納いこんで、

「もっとも、それ以上怪我のしようもあるめえがネ」

と言った。

チョビ安が左膳を父上と呼ぶのを聞いて、与吉は眼をパチクリさせている。左膳はもう与吉をしたがえて、河原から橋の袂へあがっていた。

こけ猿の壺は、開かれようとして、また開かれなかった。まだ誰もこの壺のふたをとって、内部を見たものはないのである。

気が気でない与吉は、辻待ちの駕籠に左膳を押しこんで、自分はわきを走りながら、まっしぐらに本郷へ……。

仔細も知らずに、血闘の真っただなかへとびこんでいく左膳、やっと生き甲斐を見つけたような顔を、駕籠からのぞかせて、

「明るい晩だなあ。おお、降るような星だ――おれあいってえどっちへ加勢するんだ」

駕籠舁きども、ホウ! ホウ! と夜道を飛びながら、気味のわるい客だと思っている。

道場へ着いて裏木戸へまわってみると……驚いた。

シインとしている。源三郎は石に腰かけ、四、五間離れて、丹波が一刀を青眼に構えて、微動だにしない。あれから与吉が浅草へ往復するあいだ、ずいぶんたったのに、まださっきのまんまだ。

七

与吉が、そっとうしろからささやいて、