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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

こう嗄れた老人の声が叱※(「口+它」、第3水準1-14-88)するように響いて来た。

「殿!」と、しかし、白虎太郎は、襖を尚も叩きながら、声を強めて云うのであった。

「さようの事は仰せまでもなく、とくより承知でござりまするが、今朝捉らえました旅人につき、とくお耳に入れたき儀ござって、お呼び起こし致しましてござります」

「ふむ。して、それは何事じゃの?」

「殿、お喜び遊ばしませ! 前代未聞の素晴らしい獲物が、引っ懸かりましてござりまするぞ!」

「ふむ」と老人の嘲笑う声がまた室から聞こえて来たが、「何事も大仰なその方の事じゃ、獲物の価値も知れている」

「さようなチッポケの獲物なんどで、何じょう殿を起こしましょうぞ。誠、大物にござります」

「して獲物は牡か牝か?」

「牡二匹に牝一匹、〆て三匹にござります」

「どうじゃな、牝は、若いのか?」

「若くて美しゅうござります」

「それは重畳、何よりじゃの……牡どももいずれ若いであろうの?」

「は、ただし、一人だけ」

「で、もう一人は老人か?」

「は、老人にござります」

「幾歳ぐらいの老人じゃの?」

「六十余歳かとも見えまするが……」

「いずれも立派な風采であろうの?」